都落ち女子大生の日記

都内の大学に通うも体調不良により就職活動中断、1年の休学を決断、そして田舎へ帰るのであった。

涼しげ院長

 

 

さて昨日の話の続きをば。

 

病院を出て車で2分くらいの小さな薬局へ。古くからやっているのか少し色あせた外観で、なんとも田舎らしさを感じる。

 

ドアを押して入ると、制服を着た女性と「ちょっとコンビニ行ってきます」と言わんばかりの半そで半ズボンおじさん登場。または「ランニングのついでにちょっと仕事場寄りました」といった具合のラフさ。おそらくこの半ズボンおじさんがこちらの院長さんである。この街の院長はどこかしらにクセがある人じゃないとなれないのか…

 

 

処方箋を渡し、こちらでも問診票を記入。問診票いちいち書くのめんどくさいなあと思っていたけど、今回はじめていい加減に書いたらいけないなと思った。というのも、これはいわゆる患者としての履歴書であり、記入された症状や体質を見て、初めて来た人のからだを知ることができる重要な紙切れであるからだ。当たり前っちゃ当たり前のことなんだけど、院長さんが私の問診票を凝視している様子を見て、

「こんなに私の問診票を真剣に見る人は初めて見た。私もそれ相応の真剣さをもって問診票に向き合わねば!」

と気づかされたのである。まだ院長と会話をしていない時点で、この人はいい人なんだろうなあと勝手に推測した。

 

 

さて私の処方された漢方は2種類。粉末のものと煎じて飲むものである。

煎じて飲むというのは、名前を聞いてもよくわからない植物やら何やらが入ったお茶のパックのようなものを鍋に入れ、30分くらいぐつぐつと煮込んで完成する。これを毎日やるのは地味に手間がかかるし、完成した薬草の匂いのする黄土色の液体を見るに、日課として気持ちの良いものではない。気に入らないやつの水筒にこっそり仕込んで苦味に顔をゆがめる様を拝んでやる!と考えると少し気持ちが晴れる。

しかし院長(疾風のほう)曰く

 

「粉末状より煎じるやつのほうが効果があるんだよね~~どっちかというとね!だからこちらとしては煎じるのをおすすめしてるんですよ。めんどくさいけどね。あと苦いし。やめたかったら粉末にしよう。だけど効果はあるから!がんばらないとね。じゃあ考えといいて!(シュタッ)」

 

だそうですので、院長さんがいうならぜひとも煎じましょうと思いましてこちらにさせていただいた。

 

 

 

女性の薬剤師さんはスラスラーーと煎じ方や保存方法を教えてくれ、こちらもシュタッと別の作業にとりかかった。きびきびとした感じの良い女性である。その間に院長さん(半ズボン)が問診票を携えてやってきて、漢方の効能や私の体質との関連について教えてくれた。

 

 

「今回処方するのは『辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)』という漢方ですー。」

 

 

「あ、はい。(What?????)」

 

 

「首とかひじ裏、ひざ裏に炎症がおこる人は、肺に熱がこもりやすいんですね。肺だけでなく呼吸器官全体に熱がたまってうまく発散できないんです。熱がたまるとかゆくなっちゃいますからこれを取り除くためのお薬です。あとお薬手帳を見る限り、アレルギーをおさえる薬を長期間飲んでいるようですが、そうなると胃腸は弱ってしまっていると思われます。胃腸は冷えやすいので、これが足や手の冷えにつながるというわけです。粉末状のお薬でそちらを改善していきます。」

 

 

なるほど…!院長スゴイ…!この説明だけで今まで悩んでいたことがかなり解消されてしまった。

まず熱がこもるというのは散々体感していたことで、例えば運動をしても汗をかきにくいからすぐに顔が真っ赤になるとか、冬場部屋が寒い状態でも体がほてってかゆみが増してしまうとか、寝つきが悪いとか、、、まず第一に治したかったところである。

そして、〈ほてり〉と〈冷え〉という相反することが同時に起こっていたのは、肺と胃腸という別々の器官での問題だったから、というのはかなりしっくりきた。二種類の漢方でこの2つの症状を別々に緩和させていこうということである。これはもう飲むっきゃないわ!すごいよ院長!この時点でかなり院長を好きになっている。それに院長(疾風)とは比較できないくらいの穏やかな話し方が落ち着く…そしてこれまた簡単に院長は私の不調の原因に迫っていった。

 

 

 

「あとこれまで飲まれていたお薬はとても強いお薬ですので、眠くなるというかなんというか……風邪をひく一歩手前のようなだるさがあったかと思います。かなり長い期間飲み続けてらっしゃるようですし…」

 

 

「そうですね…2015年くらいから飲んでます。(大学入学くらいから皮膚科で処方されて飲んでいたお薬。そこの先生もいい人だった。)」

 

 

「あぁそうですね。3年近くですかね。そうなるとかなり胃腸に負担がかかりますし、他の患者さんとは少し違った体質になっているかもしれないので、漢方が効くのに1~2年はかかるかもしれません。」

 

 

おお、、、なげえ、、、というかお薬がだるさの原因だったんかいな、、、まあそれが全てではないとしても、よかれと思って飲んでいた薬がわりと強めの薬であり、よくない影響も及ぼしていたというのがびっくりであった。院長すごいよ、、、私なんも言ってないのに大部分が解決されたよ、、、

 

 

 

その後は女性スタッフの方に食事に関してのアドバイスをいただいた。

 

「まずこの時期には少しきついかもしれないけど、アイスね!たくさんお砂糖が入っているからだめ。あとかき氷も。これはシロップにたっくさん入ってますね。お次にパンもよくないわねーーー。(パン愛好者としてこの時点で心が折れる)ピザもよくない。ケーキもだめよーー。小麦粉や砂糖が多く使われているもの、要するにジャンキーなものはだめ!あとはチーズやバターなどの乳製品!ヨーグルトなら少量食べる分には大丈夫ですよ。あとはナッツ類もだめ!あなたはくるみアレルギーだしさらにダメ!」

 

 

「え、きのうアーモンド食べちゃいました。」

 

 

「だめよーーー!だめだめ!アーモンドは一粒で十分!」

 

 

「ひ、一粒!?」

 

 

院長「最近は『アーモンド効果』とかね、美容や健康にいいですよってたくさん売り出されてますけど関係ないです。最近生産量が増えたから、多く売り出すための謳い文句でしかないんですよ。」

 

 

「そ、そうなんですか…!(父ちゃんは痩せるだか健康にいいとかで最近アーモンドをよく食べている。真実を言うべきか否か、父のデリケートなダイエットモチベーションを下げてしまわないだろうか…!)」

 

 

母「お父さんが最近アーモンドばっかり食べるんですよ!痩せるとかなんとかで」

 

 

女性「あーそうなのね~、でも関係ないんですよ~」

 

 

母「そうなんですね!あはははは!」

 

 

「あははははは!(やはり世の中には知らないほうが幸せなことってあるんだな)」

 

 

「あと、なにかおやつがほしくなったら、おまんじゅう!わらびもち!こういう和菓子ならいいですよ。小豆ね!ご飯も基本は和食でいきましょう。中華も大丈夫かな。豆乳なんかはお肌にもいいしおすすめよ~」

 

 

たしかにどんなネット記事を見ても、結局は和食がいいですという結論に至る。日本人には日本食が一番というわけだ。大学1年の時に行った漢方薬局では

 

院長(坊主)「カタカナの食べ物はだめ!ハンバーグ、ピザ、パスタ、ポテト、ドーナツ、ケーキ、アイスとかね。やっぱり和食がいいですよ。おやつがほしくなったらお芋だね!ふかしたりゆでたりしたら甘いしおいしいから!」

 

とかなり厳しいことを言われた。カタカナ語があふれる時代にかなりの制限。むしろカタカナの食べ物のほうが多いのでは!?

 

そんなこともあって大学1年前期の私の身体は、ほぼさつまいも出来ていたと言っても過言ではない。芋をふかしては食べ、ふかしては食べ、朝と夜は納豆ごはんとみそ汁。こりゃ戦時中か?軍からの配給か?それとも山奥の修行僧なのか?華の女子大生は修行の上に成り立つものなのか…?と時々自我を失った。

しかし大学生、しかも新歓中の1年生がカタカナの食べ物を避けて通るのは至難の業。時々は誘惑に負けて衝動的にミ〇タードーナツへ駆け込んでしまうこともしばしば。

そのたびに肌は荒れ、メンタルも荒れに荒れ、最終的には

 

「もう漢方なんて無理!!ワシは僧か!!!芋には飽きたんじゃ!!!パサパサ!!!おしゃれなパンケーキ食べさせろや!!!」

 

と発狂し漢方修行途中棄権となった。あの意味のわからん修行僧期間は自分でも頑張ったなと思う。無理だったけど。

 

 

院長「漢方は少し苦いかもしれませんけどね、効果はありますから。とりあえず3か月は続けてみましょう。体質改善が目的だから、すぐに効果が出るというわけではないんですよ。長い目で見て頑張りましょう。」

 

 

「はい、わかりました。がんばります。ありがとうございました~」

 

 

 

こうして半ズボン院長とハキハキウーマンの薬局を去り帰路についた。

 

 

自分としては再びの漢方期間突入であるが、すでにどんなもんか把握しているので

飲んでやるぜ~改善してやっぜ~苦味どんとこいや~といったお気楽メンタルである。あれ、もしかしてこの時のための修業期間であったのか…?2回目の漢方期間を乗り越えるための芋修行…?そう考えるとやはり何事も経験であるなあ。

 

 

といった具合で毎日3回2種類の漢方を飲むこととなった。煎じるタイプのものは散々「苦いよ苦いよ」と言われていたわりにそんなにであった。決しておいしいわけではないが、中国とかどっかのあやしいお茶だと思えばそんな気がしてくる。良薬とアジア圏の茶は大体苦いのである。

 

 

ここから徐々に体に変化が起きるのだと考えると少し楽しみでもある。確実にいい方向には進んでいるはずだ。キッチンは漢方臭くなるが家族のよしみで許してほしい。

 

謎に面白くていい病院や薬局が見つかったことだし、幸先吉幾三

ということで長文おわり。ありがとうございます。

 

 

 

 

20180724